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Vol.23
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| 『失われた楽園』(終章) |
| 三人は、なぜハワイに向かっているのか不思議に思い始めた。島で何があったのか思い出そうとしたのだが、摺ガラスを透して景色を見ているようで、はっきりと思い出せなかった。 |
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船室を整理していた忠平は、床に落とした手帳から一枚の葉っぱがはみだしているのに気付いた。葉っぱを拾い上げ、香りを嗅いだ忠平は、慌てて手帳をめくり読み始めた。そこには島での出来事が細かい字でびっしりと書き込まれていた。 |
| 忠平は二人の前で手帳を読み上げた。読み進むにつれて、目の前に厚く立ち込めていた霧が、風に吹かれて薄れていくように、三人の記憶がはっきりと蘇った。しかし、いぜんハワイに行く理由は判らなかった。 |
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「理由がなんだろうと、ハワイに行けばどういうことか判るようになっているのさ!」
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| 珍しくロロが明解に言い切った。バロータも忠平も、なるほどこれ以上考えても意味がないと思った。船はハワイに向けて走り続けた。 |
| 島を出て3日目、後方から一隻の船が近付いてきた。その船はかなりのスピードでこの船を追いかけているようだった。船影は見る見る大きくなって、船形が判るほど距離が縮まて来た。目のいいロロが「日本の高速艇だ!」と大声を上げた。 |
| あっという間に日本軍の高速艇は船に横付けをして、停船するように合図を送って来た。仕方なく船を停めると、銃を持った男達が乗り込んで来て、三人は高速艇に連行された。 |
| 高速艇に連行された三人は、一人づつ船長室につれて行かれ、軍属と思われるがスーツを着た二人の男に楽園に付いて尋問された。三人はそれぞれ、楽園は人の心の中にあるということを二人の紳士に熱心に説いた。男達は表情も変えずに黙って聞いていた。一通り尋問が終わってバロータと忠平は船倉に押し込まれ、ロロは高速艇で働くコック達の部屋に入れられた。 |
| 忠平は船倉で、島を出てからのことを手帳に書いた。その夜、天候が悪化し海が荒れ始めた。真夜中過ぎ、船が大きく揺れた瞬間、船倉の壁板が音を発ててはがれ、壁に空いた穴から、ロロの笑顔が覗いた。バロータと忠平はコックの部屋にもぐり込み、衛兵の目を盗んで逃げる機会をうかがった。 |
| 衛兵がうつらうつらしている隙を見て、三人はデッキに上がり、船尾に繋がれた船を手繰り寄せ乗り移った。しかし海が荒れていたので、なかなか上手く乗り移れず、時間がかかってしまった。最初に身が軽い忠平が移り、次にバロータが続いた。バロータは学者なのでこういうことは慣れてなく手間取ってしまい、ロロが乗り移ろうとしたときには、逃げ出したことに気付いた衛兵達がデッキに上がって来てしまった。逃げることを諦めたロロは、握っていたロープを放して船を流し、バロータ達を逃がしてくれた。 |
| 荒れた夜の海では、高速艇を離れた船は、見つかることなくたちまち暗闇に姿を消した。バロータと忠平は船を流れるままに任せたが、海はますます荒れ狂い、船は嵐の真只中に入ってしまったようだった。しかし二人の頭の中は、逃げ遅れたロロの事でいっぱいだった。突然船が持ち上げられ、大きく傾いたと思ったら、船は逆さまになって海中に落ちた。船室にどおっと海水が流れ込んだと思ったら、再び船が持ち上げられて落ちた。これで船は元の位置に戻ったが、マストが折れ、船室の屋根と後部デッキが壊れた。波をかぶるたびに海水が流れ込み、船は沈み始めた。二人は大切なものを小さなトランクに入れ船室を出、外れた船室の扉に掴まり船を離れた。バロータと忠平は荒れる真っ暗な海を漂った。夜明けの時間になっていたが、空は夜のように暗かった。1899年7月1日の朝のことだった。 |
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(完)
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2001年12月1日
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オレは今、アンナさんとアラハレイク沿いの小道を歩いている。アンナさんは涙ぐみ、鼻をすすっている。
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| 「バロータも忠平も可哀想。せっかく楽園が何かが分かったのに。それに、ロロはどうなったのでしょう?」 |
| 「さあ−、手帳には何も書いてなかったので・・・。でも、ロロは殺されずに解放されたと思いましょう。そのほうが楽しいから」 |
| 「そうですね。判らないことをなにも悪い方へ考えることはないですものね」 |
| 今日は1日中アンナさんとアラハレイクのあたりをブラブラしながら、手帳の話をした。手帳を見ながら、最初から終わりまでを全てアンナさんに話した。オレも改めて全部通して読んでみて、人は何のために生きているのかを考えさせられた。彼等はこの手帳を残すために生きたことになるのだろうか?つまり、楽園の事を誰かに伝えるために!そしてこのオレがそれを読んだ。ということは、オレは彼等の人生を引き継いだことになるのだろうか?これはエライこっちゃ!どうしよう! |
| オレはこの島に楽園を探しに来て、そして楽園を見つけたら、そこでポレポレと暮らす予定だった。それが、楽園とは何かを多くの人に伝えるという使命を与えられたことになる。これって、ミイラ取りがミイラになるってっことじゃないの。 |
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| 「kazsan 、あなたの手に手帳が渡って良かったわ。だってあなたは彼等の意志を継ぐのにぴったりだもの。私もできる限りお手伝いをするわ。二人で楽園を創りましょう!」 |
| 「はい、ぜひそうしましょう!二人で楽園を創りましょう!」 |
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と、オレは鼻の下を長くしながら答えてしまった。こうしてオレは、楽園のエージェント001になってしまったようだ。ふと楽園の三人の笑い声が聞こえたような気がした。
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楽園の放浪者パート1は、とりあえずこれで終わります。長いおつき合い有り難うございました。
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kazsan
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