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Vol.22
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『失われた楽園』(新たな旅立ち)
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| 三人は、螢のように発光するトンネルを下って行った。どのくらいの時間トンネルを下ったのだろうか?判らなくなるほど長い時間が経ったというのではなく、時間の感覚が麻痺してしまったという感じだった。 |
| 突然トンネルの先に出口の明かりが見えた。トンネルを出るとそこは地上であった。地下をさらに下ったのに地上に出るとは、不思議だ。しかしそこはまぎれもなく地上で、頭上には青空が広がり、気持ちのいい風がそよぎ、その風に乗って花のいい匂いがあたりに漂っていた。三人は思わず深呼吸をした。 |
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| ロロが、ここはポリネシアの島だと言った。そういえばパラオのような熱帯の感じがしないとバロータも言った。植生の印象が熱帯より明るい。バロータとロロが植物を調べ始めた。二人とも、ここには今までに見たことがない植物がたくさん生えているようだと言った。忠平はどんな植物が生えていようがかまわなかった。ここが気に入ってしまったのだ。気持ちが良かった。きれいな花がそこら中に咲いていたし、ジャングルにあるような高く大きな樹は生えてなく、高いといえばヤシの木ぐらいで、森が明るかった。果物のような、食べられそうな実がなった木もたくさん生えていたし、きれいな川が流れていて、川岸は芝生のような草が生えた空き地になってる。そこに小屋を建てればすぐに住むことができそうだった。ロロが早速木の枝と大きな葉っぱで小屋を建ててくれた。 |
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| ここでの暮らしは、食べたいと思うものはちょっと探せばなんでも簡単に手にはいったし、水もきれいで美味しかったし、気候は熱くなく、寒くなくで、すこぶる快適だった。それに気持ちの方もゆったりとして何の不安も不満もなかった。忠平は浦島太郎の竜宮城を思い浮かべていた。それは、絵にも描けない美しさや快適な暮らしというだけでなく、月日の経つのも夢のうちというわけで、時間の感覚が麻痺して、どのくらいここで暮らしているのか判らなくなっていたからだ。 |
| ある日忠平はバロータに言った。 |
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「バロータさん、ここの暮らしは何不自由なく快適だけれど、このままこうしていても良いものだろうか?」
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「私も何の不満もないのだが、心のどこかが落ち着かないのだ。これでいいのかなぁーと」
バロータと忠平が話し合っていると、イルの声がした。 |
| 『気が付きましたか?ここはもう魂を磨く必要がない者が住むところなのです。個々の意識が、意識体、神と完全につながった者が居るところで、あなた達にはまだ早過ぎるし、意味がない世界なのです』 |
| 「では、天国なのでしょうか?」 |
| 『そうですねぇ−、あなた方の言う天国に近いものかも知れません。前に、宇宙は意識体の一部、人間はもともと神だと言いましたが覚えていますか?』 |
| 「ええ覚えています」 |
| 『一つの意識体、神が物質化して個別に別れた理由は、神が完全無欠だからです。つまり神はゼロなのです。したがって、喜びも悲しみも、生も死もありません。ただ完璧なのです。あるとき神は変化を望みました。電荷がゼロのモノを二つに分けるとプラスとマイナスの電荷が生まれます。神が物質化して別れることによって様々な質を持った世界が生まれたのです。人間もその一つです。 |
| 人は、楽園に不死や安楽のイメージを重ねますが、もし不死や安楽があるのが楽園なら、死や苦渋があって始めて楽園が成り立つことになります。死や苦渋がなければ、人は不死や安楽を望む必要がないからです。幸せも、不幸があるから幸せを感じることができる。喜怒哀楽、生と死、人間世界のあらゆることはゼロが別れて出来上がったことですから、何一ついらないもの、必要のないものはないのです。だから人は色々な感情を持ち、喜怒哀楽、生と死、つまり生きることができ、それを味わうことができるのです。否定の上に楽園は成り立ちません。世界にあるもの全てを受け入れ、充分に味わうことで、楽園が出現するのです。人間はすでに心の中に楽園を持っているのです。それに気付くには何をすれば良いのかを、ただ見つければ良いだけなのです』 |
| 「わかりました。楽園はすでに私達の中にあったのですね。私達がすべきことは、楽園が表に出現するような生き方をすれば良いということですね!」 |
| 『そうです。分かってもらえたようですね。では、あなた方を元の世界に戻しましょう。支度をしなさい』 |
| 三人は身の回りの物を集めて帰る支度を始めた。忠平は、足元に生えていたシダの若葉を摘んで手帳に挟んだ。このシダは気持ちを安らかにしてくれる独特な良い香りがして、小屋の回りにたくさん生えていて、すっかり馴染んだものだった。イルの声がした。 |
| 『支度が良かったら、目を閉じて手をつなぎなさい』 |
| 三人が手をつなぎ、目を閉じた瞬間、足の下の地面が消え、ふわっと身体の重さが無くなり意識が消えた。 |
| 三人は、海辺の船の横に立っていた。しかし、なぜここに立っているのかが理解できなかった。これから何をしようとしていたのかも思い出せなかった。三人の記憶は完全に消えていた。だが、この島を出てハワイに向かわなければと、なぜか三人とも思っていた。 |
| 三人は船を修理して、ハワイに向かって出帆した。 |
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(次回に続く!)
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訂正
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| 楽園の放浪者 Vol.13 の、忠平の手帳、明治30年5月1日の文章中、 |
| 神社の今の祭神は天ウズ女命ということになっているが、本当は天津神の一人を祀っていたらしい。天津神というのは天孫降臨以前にいた神々のことだ。 |
| 上記の中の、天津神を国津神に訂正しました。 |
| (天津神というのは天孫降臨以後の神々のことであり、国津神とは天孫降臨以前に居た地神ことです。) |
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