![]() |
|
Vol.6
|
|
かつて森は食料の宝庫であった。もちろん今も森の中に食料になる物はたくさんある。今はそれを利用していないという意味から、かつてという言葉を使った。森から食料を得て 森で暮らす人々はまだ世界中に多くいる。しかし都市で生活する人々は、森から食料を得る知識や技術をもはや持っていないので、森で生き抜くことは難しい。私も、文明の力に頼らず森の中で生き抜くことは出来ない。持ち込んだ食料がなくなったら森から出ないと遭難者になってしまうのだ。私は Headache Edge の森で悔しい思いをした。森で生き抜く力、つまり森から食べ物を得る知識や技術を持っていれば、もっと長いこと Headache Edge の森を楽しむことが出来たからである。
|
| いま我々は、食べたい物を簡単に手に入れ食べることができる。また、不味い物は食べずに美味しい物だけを食べるという我がままも当然のこととして許される。あなたはこういう食生活が、生きるために食べるということに正しく当てはまっているかどうか考えたことがあるだろうか?倫理的にではなく栄養学的にだ。 私は、如何に働かず(金を使わずに)生きるかという壮大なテーマのもとに、人は必要最低限、何を食べれば健康に生きて行けるかを、栄養学的に調べたことがある。 |
![]() 悪い食事とよい食事/丸元淑生(新潮文庫) |
| 体にとって絶対に必要だけれども、体内で作り出すことが出来ないため、食べることによって体に取り入れなくてはならない栄養素のことを必須栄養素という。その数は50数個ある。栄養素は大きく5種類に別けられる。炭水化物、脂肪、タンパク質、ビタミン、ミネラル。このうち前の3種類を3大栄養素という。50数個の必須栄養素のどれ一つが欠けても体にとっては困ったことになるらしい。何しろ必須というくらいだから。またミネラルに関しては各種間のバランスが重要で、コマーシャルで「カルニ、マグイッチ」等とやっていたのを覚えているだろうか?あれはカルシュウムとマグネシュウムが2対1(Ca と Mg の適性比率)の補助食品の宣伝だったが、各ミネラル間に適性比率があるわけで、どれかが多すぎても少なすぎても良くない。 |
![]() |
|
栄養のある食物として思い浮かべるのは、ステーキや焼肉などだろう。「焼肉食って元気つけなくちゃ」なんて焼肉屋に行く。一般に元気がつく食べ物として思い浮かべる物はカロリーが高い物が多い。すなわち栄養イコールカロリーと考えている人が多い。これは間違い。カロリーは体を動かすためのエネルギーで、栄養は体を形作っている物質を作るための材料となるものだ。必須栄養素のどれかが足りなくなって起こる現象を一つ・・・。
|
|
栄養素は体を作る元だから足りなくなると脳からその栄養を取りなさいと指令が出る。つまり食欲が湧き、食物を食べる。しかしその必要とする栄養が入ってない物をいくら食べても体はその栄養素を必要としているから、脳からの食べろという指令は止まらない。食べても食べても食欲が満たされない。食べ続ければ太る。肥満は栄養が足りなくて起こる現象の一つなのだ。栄養失調で肥満になる。
|
| ハイパーアクティビティー(hyperactivity) とは何か知っているだろうか?70年代のアメリカで起こった青少年問題である。ハイパーアクティビティーの特徴は、集中力に欠ける、注意力の及ぶ範囲が狭い、落ち着きがなく、すぐカッとなり暴力を振るう、親、教師の言うことを聞かない。原因は、悪い食事との関係が追求され、アメリカの栄養学者が指摘したのは、砂糖と砂糖を多く使用した加工食品の関係であった。これらの取り過ぎで、脳における生化学的アンバランスが起きていることが原因と判った。ハイパーアクティビティーの子供達を施設に集め、食事療法で治療した結果は満足のゆくもので、子供達からはハイパーアクティビティーの徴候がなくなって普通の子供になったということだ。いま日本で起きている青少年問題はまさにこれではないかと思う。親の躾や教育の在り方ばかりが問題視されて、栄養学的にこの問題を捕らえることをしていない。薬物中毒と同じように脳内の生化学的バランスが崩れた子供に、親や教師が口を酸っぱくして道徳、倫理を説いたところで効果はないと思う。まず脳を正常に戻さなくては、それには正しい食事が大切なのだ。 食事は生きることの基本だ。食事を真剣に考えることはとても大切なことだ。だから何をどのように食べたら健康に生きることができるのかを今一度学ぶべきだ。もちろん栄養を壊さない料理法も大切だ。 |
|
7月20日
|
|
今日は町へ下りなくてはならない。食料が底をついたのだ。Headache Edge の森はとても素敵だった。こんなに面白い所だとは想像もつかなかったので、予備の食料も含めて一週間分しか用意してこなかった。ブギーはこの一週間、ドア−の横に開けた猫穴から自由に出入りして気ままにやっていたようだが、オレが用意して置いたキャットフードにはあまり手を付けていなかった。きっと森で獲物を捕まえて食べていたのだろう。まったく偉いやつだ。オレなんか、森から得た物といえば精神的にはたくさんあるが、あとは水くらいなものだ。町へ下りたら本屋に寄ってサバイバルの本でも探して、少し勉強しよう。人間はいろんな欲望をもっているが、唯一我慢していると命に関わる欲がある。それが食欲だ。オレはこの森で、食べることにもっと真剣に取り組まなくてはいけないことに気が付いた。栄養学的にもサバイバル的にも、そして料理法も、オレは楽園の哲人の他に食の哲人も目指すことにした。
|
|
|