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Vol.2
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前回は、旅のイントロダクションでしたが、今回は今後の展開と、私がなぜ楽園にこだわるのかを書いてみたいと思う。まずは今後の展開。
「よし決めた、絶対にここだ!ここ以外は考えられない」と思わず叫んでしまう場所に出会ったら、この放浪の旅は終わる。旅を始めてすぐに出会ってしまえばそこで旅は終わってしまうし、もし出会わなければ、この島に私の約束の地はないと納得するまで、島をぐるぐると回ることになるだろう。旅をしてる間は、私の考え、思ったこと感じたこと、出会った人、事件、場所などについて、徒然なるままに書こうと思う。印象に残った日のことは日付けを入れて書くが、日記ではないので日付けは飛び飛びになると思う。私は画家だが日記は得意ではない。思索する人間としては、日記ぐらいは毎日きちんと書かなくてはと思うのだが、いつも長くは続かない。高名な画家で立派な日記を残している人は多い。だから私は高名ではないのか?画家だと言ったが収入のほとんどは版画を売って得ているので、私は版画家と言った方がいいのかも知れない。 |
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私は節操なく色々なテーマで作品を作って来た。より多くの人により多く買って欲しいと、バリエーションを増やす意味で様々なテーマに手を出してきたのだ。その結果、バリエーション豊かな在庫が手許に沢山ある。そんな私にもライフワークはある。それが「楽園」である。「Paradise」という題名の作品をシリーズで作っている。人は誰でも、自分の楽園を心のどこかに持っていると思う。行ってみたい所、住んでみたい場所、憧れの地、人それぞれだと思うが、もしそれらを楽園と呼べるのなら、誰もが心のどこかに楽園のイメージを持っているはずだ。私は自分の中にある楽園のイメージを目に見えるものにして、私の楽園は何処なのか確かめてみたかった。しかしこの試みはうまく行かなかった。少しでも良い(売れる)作品を作ろうと、楽園とは何ぞやと考えてしまうからである。頭の中に理想の楽園を作りはじめてしまうのだ。私の中にある純真無垢な楽園が、別物に、商品化してしまったような気がするのだ。だから今、私は私の純真無垢な楽園を探して放浪している。これは哲学的な追求なのだ。目ざすは楽園の哲人。
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6月30日
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| 夏至の日没に酔いしれてから10日近く経つが、今だサンセットビーチ近辺をウロチョロしている。それには理由がある。この島は日付変更線の東側にくっ付くようにある。つまり、地球上でその日最後の夕日が見れる場所なのだ。そして、夏至の日の太陽が沈んでいった島は日付変更線の西側にある。どうだ!オレはこの凄さに気が付いてしまったために10日も日没を眺めて過ごした。この島では、地球でその日最後の夕日が明日に沈んでゆく所が見れるのだよ。凄いでしょ!何が凄いんだか判らない人は、地図か地球儀を見て考えるべし。
夕陽評論家でもないのに夕日ばかり眺めているのは何だから、そろそろ移動しよう。さて、何処に行くのかそれが問題だ。実は、夕日が明日に向かって沈むという事に気が付いたというのはウソ。夏至の次の日、サンセットビーチで逢った人に教えてもらったのだ。その話を聞いて感動したのは本当だ。だから10日も夕日を眺めていた。その人も夏至の夕日を見に来ていた。住んで居るのはここと反対側、島の東端の町だと言っていた。その町からは、山に遮られて海に沈む太陽は見れないのだそうだ。町の名はUkara、フィッシャーマンズタウンで、彼は元漁師だと言っていた。なにかの理由で漁師を止めたらしいがそれは聞かなかった。また逢う事を約束して別れたから、その時に教えてもらおう。ここからUkaraまでは、反時計周りにぐるっと島を回らないと行けないのだそうだ。Ukaraは旅の最後のほうに行くことにして、まずはNorth Back 沿いに走って島の北東部を巡ろう。 実は、ここでぐずぐずしている間に旅の相棒が出来てしまったのだ。本人の口から一緒に行きたいと聞いたわけじゃないのだが、態度、雰囲気がそう言っている。夜のテーブルを共にして居るうち、数日前からベッドも共にするようになってしまったのだ。茶トラのオスなのだがなかなかのハンサムで、ブギーと呼ぶことにした。波乗りで使うブギーボードのブギーだ。何となく閃いた。明日は早起きして出発しよう。 |
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| 7月2日 | |||
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| North BackのKikiとLiraの間の浜辺にいる。真昼の無人の浜だ、滅茶苦茶に暑い。海も空も空気も、何もかもが止まっていて音もしない。聞こえるのは真上から照りつける太陽のジリジリという音だけ。日陰は足の周りににほんのちょっとくっ付いているオレの影だけだ。時間と空間が固まっている。呼吸がしづらい。 浜から少し離れた木陰で今これを書いている。太陽に負けて避難して来た。ここは蝉の声が聞こえる。ブギーはこれ以上長くなれないといった格好で床に伸びている。このシェルは木造なので普通のキャンピングカーよりは涼しい。人間って我がままだから、−40度の極寒の地で、もうダメだと思った瞬間に、さっきの浜辺が目の前に浮かんで来て「ああオレの楽園」なんて呟くんだろう。 島に来てほぼひと月。オレがして来たことといえば、空気を吸って吐いて、食べて出して、寝て起きる、ただそれの繰り返し、あとはほんの少しの移動。でも妙に充実している。寝る時は一日の終わりに満足し、朝は新たに始まる一日にワクワクして目を覚ます。なんか、生きるってこれでいいんじゃないの?って思ってしまいそう。一ヶ月が早かったのか、遅かったのか、それも全然気にならない。時間の流れ方が今までと違うみたいだ。もしかして、これって楽園・・・・? |
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