自然が手の平を返した瞬間

――今回のレースは大変だったんだって。

レースが始まって、5時間で僕はもうオアフの手前にいたんです。去年は6時間28分だったから、オアフへの距離を逆算しても去年よりも30分ぐらい早いんです。でも、オアフに来て、よしというときに自然が手のひらを返したんです。

――手の平を返したというのはどういうこと?

潮の流れが全く逆だったんです。モロカイとオアフの間にトレードウィンドウが必ず吹いて、その風が強ければ強いほどオアフを直線で目指すと左に流されるんです。強ければ、強いほどオアフより右に向かっていかなければならないんです。風の動きが波を作り、潮の満ち引きが水の動きを作る。

ですから、進み方は2種類あって、表面の波を下りて行くスピードを利用するのが一つ。もう一つは潮流に乗ってしまうというもの。波は目に見えるから簡単なんです。でも、潮流というのは水全体が動いているから目に見えない。川みたいに流れていればわかりますが、海は全体が動いているからわからない。

今回の場合は風がめちゃくちゃ強かったから、完全に右のコースをとりました。5月20日のサーフスキーのレースでは結果を出していますから、ノースコースに行って風と一緒にオアフを目指そうと考えたんです。でも、風はそのときより、もっとすごいし、ボードは推進力はないから、もうハーフマイル北をとったんです。

だから2時間たったときに、いつもならストレートラインより1.5マイル北を行くのですが、2.5マイル北にいました。もちろん僕と一緒の人もたくさんいますし、もっと北に行った人もいる。そうかと思うとストレートをとって、スタートして5分もしたら見えなくなるグループもいるんです。でも、今年勝った人はストレートコースを取った人だったんです。

――じゃあ、南のコースを取った人が勝ったの?

勝ったのは1マイルノースにいって、真ん中にある浅瀬まで行き、そこだけ波があるので、がんばってストレートラインに直した人が上位に入りました。

――自然をどう利用するかなんだね。おもしろいね。

自分もモロカイでのレースは8度目ですから、完全なかけに出たんです。先頭集団を追いかけるだけでなく自分のレースをしていこうと。5時間でオアフのノウスに来て、風もちょうど真後ろから吹いているから、その風に乗ってオアフに向かって切り込んでいこうと考えたんです。
しかし、切り込もうと思ってから30分間、精一杯手を動かしても、あんまりオアフが近づかない。正確に言うと、オアフには接近しているのですが、ゴールポイントには近づかない。ゴールのハナウマベイから約300メートルから400メートル隣のサンデービーチまで来て、一向に進まなくなったのです。そのときに、いつもとは流れが違うなとは思いました。サンデービーチで方向を変えるために切れ込もうとするけれど、引き寄せられるんです。

全力でパドリングをしながら、2分に1回はサンデービーチと後ろの山を見るけど、自分が動いてるとは思えなかった。その段階で初めて「はまったな」と確信を持ちました。

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