残り1時間で起きた奇跡の復活

――それから、どうなったの?

そうしたら、自然とリラックスしてきて、首の痛みも感じないし、吐き気もなくなりました。自分の体の中の生理的な反応を自分でコントロールできたんです。「何だ、オレの体動くじゃん」と思ったら、早い早い、肩がぐんぐん回り始めて、ぐんぐん力が出て、スタートと同じピッチで動けるようになった。ヘロヘロになっていたのが4分の休息で復活できたのです。

――何なんだろうな。やっぱ、精神的なものなの?

もし、この腕を一回でも止めたらダメだという思いも大きかったです。動き出しちゃったから、止まるまで動かすしかない。そうしたらじょじょに進み始めた。

タイムリミットまで1時間。そこからは時間が進むのが早いわけですよ。まだいけるのに、時間が足りないという気持ち。2人、3人と抜きながら、ひたすらゴールを目指しました。

ハナウマ湾入ったときに残り時間は14分。そこはいつも練習しているところなので、何分かかってゴールのハワイカイに着くかか知っていた。どんなにがんばっても30分は切れないんです。ハナウマ湾に8時間以内に入った時点で、レースを続けられることにはなりましたが、現実的に8時間を切るのは無理と分かりました。だからといって、手を止めたら動かなくなるから、ゴールまでがんばりました。

ゴールした後は体が動かなくなり、岩場の上に座って、水だけ飲んでました。誰が来ても話せない状態。1時間してようやく立ち上がれるようになりました。

――最後、なぜ、体が動くようになったのかな。

気持ちでしょうね。

――でも、いい経験だったと思うよ。たった4分止めたことで、一つの技術を得、進化したかもしれないよね。4分間の前後では同じ人間じゃないと思うんだ。

その通りだと思います。

――今までで、経験した中でどのレースが一番大変だった?

やはり今回です。モロカイではいつも上手くいってましたから。

――モロカイにレースに対する自信をうち砕かれたんだな。自覚しないと成長しないから、今回はいろんなことに気づけてよかったんだね。


何位に入るということも大切だけど、結局は自分を超えるためのチャレンジですからね。

――今回は超えたかもしれないという自覚を持ったんだな。そうすることで、人間は強くなるし、優しくなるし、体力的には落ちても、精神的には強くなってくる。

モロカイの上位には若い人は入ってこないんです。30代、41、42歳ぐらいの人に僕らは勝てないんですよ。でも、今回のレースで勝てない理由が分かりました。

――人間の力は経験も含めすべてなんだね。

そうですね。競技スポーツで活躍するのは、若くて力のある人ですが、自然を相手にしたときは、そうじゃないんですね。経験がものをいうんですね。

――来年が楽しみだな。そのときは見にいこうかな。

ぜひ、来てください(笑)。

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