by ichi
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「このラップトップコンピューターってのは何?」

「ん〜、それがあれば塩の倉庫でもロンドンの事務所でもきちんと仕事ができるだろう、私は是非それが欲しいんだよ。」

目の前の恰幅の良いキリバス人の口からは、トラックが欲しい、バイクが欲しい、事務所もないし、コンピューターも欲しいんだ!次々に欲しいものが飛び出してくる。欲しいのはわかるけどプロジェクトがうまく進んで利益が出てからじゃないと買えないだろう?と僕が切り返すと、

「でもバイクがないと作業者が塩田に行けないし、トラックがないと塩を港に運べないし、そうそうそれから長靴が足りないんだよ、長靴がないと仕事ができないし、それも今ある黒いやつじゃなくて、白いのが良いよ、黒い長靴じゃ足がやけどしちゃうんだ!!」

・・・「バイクは去年2台送ったし、長靴も手押車もたくさんあるはずだけど?」と確認してみるが

「あ〜バイクはとっくに壊れちゃったよ、それに手押車も壊れてるし、海水を汲み上げるポンプも・・・」

「ポンプは新しいものを去年送ったでしょう!?なんでそれを使わないの?」

「今使ってるのは新しいポンプだけど、メンテナンスに手間がかかって大変なんだ、新しいのを送ってくれると助かるな〜」

“already broken”クリスマス島で一番良く聞く英語かも?と思う程なにもかも壊れている。ここはクリスマス島ダウンタウン“ロンドン”大臣の事務所の会議室、といっても壁も天井もベニヤ張り、テーブルは傾いているし、丸椅子もがたがたして落ち着きがない。僕の目の前には新しく塩田のプロジェクトの担当者となった多分30才前後のキリバス男がボテッと座っている。


確かにクリスマス島には物がない、日本から何か送ろうとしても、タラワ経由の船便しかないからとても高くつくし時間もかかる。それでもないと困るから色々送っても、整備したり修理したりしないのですぐに“already broken”となってしまう。確かにこの強力な潮風の中では金属類はあっという間に錆びてしまうのだが、毎日手入れをすればそんなに簡単に壊れることはないはずだ。それに昨日の夕方塩田を見に行ったときに確認したのだが、ポンプ小屋には古いポンプが赤錆の塊になって鎮座していた。ん〜困ったな〜、しばしスーパーバイザーという肩書きの現地人とにらめっこなのであった。


日本でクリスマス島の塩のホームページを作って片手間で販売しているだけの小売店店主のような仕事をしている僕は、この事業全体としてはオブザーバーに近い。ただ、ホームページの情報を充実させたいので、資料を集めたり取材をしたりしているだけなのだが、ここに来るときは大抵なにかしらの仕事を依頼される。今回は目の前の彼が手にしている今後3年間の事業計画書を受け取って話を聞いてきて欲しいという依頼を日本の貿易会社から受けていた。4ページ程度の書類などはFAXで送れば良いと思うのだが、そのFAXをいつまでたっても送ってこないのが南の島流で、誰かが行って受け取ってくるのが一番早いのだ・・・貿易会社からのリクエストで大急ぎで作ったと思われるその計画書は、「お見事!」と思わず声が出るほど天真爛漫な計画が書かれている。一応内容を確認してリクエストを聞くだけ聞いておなかが一杯になったところで事務所を出た。

11時過ぎ、すでに太陽は真上近くにあってジリジリとした圧力をかけている。ロンドンの商店街の脇に車を止め、ジュースを買おうと店に入ると、そこには冷えたジュースが売っていなかった、その代わりツナ揚げパンはどうか?と聞いてくる、ん〜僕は喉が乾いているんだけどな・・・と思いつつ、隣の店を覗いてみると、ダイエットペプシと見たこともないファンタがかろうじて冷蔵庫に入っている。南の島で売っているダイエットペプシはやたらとマズイ、しょうがないのでファンタを買ってみたが、これはこれで甘すぎる・・・車に戻ると、トラが車の中で揚げパンを頬張っていた、このムスメは・・・

一息入れたらもう一つ打ち合わせ、次はクリスマス島クリーンナップの件だ。このプロジェクトには僕もスタッフとして参加しているので、担当者と話ができるのを以前から楽しみにしていた。先程ジュースを買った商店街の裏、島民の生活や衛生、それから公共工事などを担当しているセクションの建物の中に現地担当官マポーラ氏の事務所がある。

ロンドンの商店街、ここに無い物は他を探しても買うことは出来ない。

左側の扉のPOPに注目!


マウリ〜と挨拶をしながら事務所に入っていくと、先程の大臣の事務所よりまっとうに働いているので、まず驚いた。入り口のカウンターの前で少し待っていると、奥からスキンヘッドの目玉の大きな男が満面の笑みを浮かべながら出てきたので、また驚いてしまった。中肉中背のその男はキリバス人というよりかはフィジーでよく見られる感じに近い。キビキビとしたその動きからしてキリバス人とはちょっと違う、このセクションのチーフオフィサーであるマポーラさんとひとしきり話をした後、先日日本から送った資材の確認をするために建物裏の作業場に行く事になった。

公共工事の資材を作る作業場


外に出てみると気温がさっきよりもまた上がっているようで、すぐに汗が吹き出てくる。「暑そうだな、なんか飲むか?」といって事務所から戻ってきた彼の手にはダイエットペプシが・・・こんな物ばっかり飲んでいるから糖尿病になっちゃうんだぞ!糖尿病を英語でなんて言えば良いのか分からなかったので、とりあえず日本語で注意してみたが、マポーラさんも助手のマナティーもニコニコしながらみごとな一気飲み。8月に送った資材は先月末にようやく到着したところ、なんと3ヶ月もかかっている!2tトラックは早速ゴミの収集などに使っているようだが、空き缶のプレス機は木箱に入ったまま片隅に置かれていた。3月に新しい桟橋の工事が終わると、そこで事務所として使っているコンテナを分けてもらえるので、それが来たらその中に移してプレス作業を始める予定らしい。困ったことに彼らの“予定”はより“想像”の域に近いので、次に来た時にも箱入りである可能性が強い・・・

右奥がマポーラ氏、木箱は日本から贈られた資材、二人ともかなり濃いキャラクターだ。

木曜日にトラックでゴミを回収しているところを撮影することを決めて、彼の事務所を後にする。次はいよいよダイビングだ!


続く