by ichi (endou@site.ne.jp)
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朝はとにかく寝ていたい、特に2日目の朝は昼過ぎまで寝ていられたらどんなに幸せだろう。いつもは8時過ぎにもそもそと起きだす僕でもどうにか6時半には起きてシャワーを浴び無理矢理目を覚ます。バスタオルを腰に巻いただけの格好で目の前のビーチに出て一服する。僕の頭の中には朝の海は穏やかなイメージがあるのだが、この海は朝から容赦がない。強烈に眩しい朝日と強い風・吹き付ける波しぶきを全身に受けながらリーフのきわで砕ける波の音を聞いていると、自分が太平洋の大自然の中に身をさらしていることを強く感じる。都会生活では外で半身裸になることもないし、風を受けることもない。少し不安でもあり、最高の気分でもあるこの気持ちよさは、腰に巻き付けているタオルをとったらもっとリアルになるかもしれない、とするとヌーディストビーチってのもアリなのかな〜・・・ん〜しかしそれはそれで他の邪念が出てきて風とか太陽どころじゃなくなってしまいそうだし...そんなことを思いつつ砂浜に波の模様となって取り残された珊瑚のかけらや貝殻を拾いながらブラブラ歩いていると、波打ち際に黒い影が漂ってい るのが見えた。よく見るとそれは大きな飛びエイの群れ、あっカメラを・・・と思っているうちに、ひらひらと身をかわして沖の方へ逃げていってしまった。残念。

他の部屋にはすでに人影がない、アングラー達は6時過ぎには迎えに来るガイドのピックアップトラックに乗って出ていってしまう。彼らが戻ってくるのは夕方の6時頃なので、丸半日釣り三昧ということだ。多少お金に余裕がある人かリタイアしたカップルなどのアメリカ人釣り客が多いので70歳近いご隠居ご夫婦などを見かけることもある。この炎天下の中で半日もフライを投げ続ける体力には脱帽するが、それヤケドでしょう !! というほどの赤ら顔を見ると、いくら何でももやりすぎなんじゃないの?などとよけいな心配をしてしまう。朝飯のサービスは8時までなので遅れないようにレストランに向かう。

雲を蹴散らすようにして昇る朝日はまるで夕日のような色をしている、それでも体にあたるとさすがに熱い。


レストランのテーブルには見慣れない種類のシリアルの箱やサラダが作れるように材料を揃えたプレートと飲み物がおかれている。前の晩のメニューによってはその残りが温めなおしておかれることもある。オレンジジュースをコップについで席に着くと、ボノボノと係の人がやってくる、ベーコンと卵は要るか?と訊ねてくる、スクランブルでもサニーサイドでもオムレツでもたいていのワガママを聞いてくれるのが嬉しい。相方のトラが卵2個分のオムレツをお代わりしたときには、さすがにびっくりした顔をしていたが、快く応じてくれた。それにしても朝から卵4個とは・・・たまにパンケーキを用意しているときがあるので、あればラッキーだ。焼きたてのパンケーキにカナダ製のメープルシロップをたっぷりかけて食べるとその粘っこい甘さが疲れた体をリラックスさせてくれる。ハムやベーコンやオレンジなどの朝の定番メニューの殆どがハワイからの輸入品だが、トーストされて出てくるパンはホームメイドで、カリッとした歯触りも良いし味もなかなかのものだ。パンにはことごとくうるさい人はこの甘さは砂糖を入れているからだとか色々あるよう だが、こんな辺鄙な島の質素なホテルでパンを焼いているということに感激する。逆にいただけないのはコーヒーだ、色の濃い麦茶のようなお湯は、インスタントコーヒーを入れるには最適なのだが・・・。

※ボノボノ

南の島の人達がペッタンペッタンとビーサンを鳴らしながらの〜んびり歩く様子、僕の場合は南の島の人々そのものを指す場合もある。


コーヒーとたばこで一服した後にはレストランの片隅にあるサンドイッチコーナーでお弁当を作るという大切な仕事が残っている。フィッシングにしてもダイビングにしても、ここで作ったサンドイッチが貴重な昼飯になる。ロンドンには簡単なランチを出す店がある、チキンか魚かを選んで待っていると大きなプレートにドンブリ2杯分はゆうにあるご飯が盛られ、その上にスープで煮込んだ鳥肉か魚がぶっかけられた物が出てくる。不思議なことに覚えがある味のスープは、実はサッポロ一番の塩味だったりする。煮物の中に混ざっている妙に薄い塩味の麺の破片を食べながら、これならラーメンそのものを出してくれればいいのに、と思ったことがあった。ということにならない為にも真剣にサンドイッチを作る、ハムやチーズを焼きたてパンに大量のマスタードと一緒に挟み込む。それをジップロックのサンドイッチパックに入れて完成だ。作りすぎて残すともったいないので、少な目に作ってリンゴやバナナを一個足すと丁度良い。

今日はクリスマスカードに消印を押すという大切な仕事がまっている。これが終わらないと落ち着いて他のことに手が回らないので、自然と気合いが入る。実際どのように消印を押しているかはプロジェクトに参加してくれた人だけが知っている楽しみなのでここでは詳しい話はしないが、消印がかすれたりズレたりするとクリスマス島から届いた証拠が無くなってしまうので、気を遣う細かい作業だ。トラが要領よく作業を覚えてくれたので、予想以上に早く終わった。国ごとに仕分けをしてカウントが終わってもまだ4時だった。日没までにはまだ時間があったので、クリスマス島の海の塩を作っている場所まで行ってみることにした。

サンドイッチにはマスタードを多めに入れるのが悪くならないコツ。右側のお化けシャコはビーチで捕ったマンティス・シュリンプ。昔は50cmを越えるものが捕れたのだが、これも乱獲の影響で最近は大きいエビは見られない。あっさりとしたカニの様な味でとても旨い。


特に目立った産業のないこの島に国連の援助で塩田が作られたのは10年程前、インドから来た専門家によって場所と製法が確立された。一時は中断していたときもあったが日本の有志によって5年ほど前に再開され今に至っている。その為、塩は日本のみに輸出され日本国内でしか入手出来ない貴重品となっている。その作り方はいたってシンプルで、簡単に言うと塩田に海水を入れて放っておく、赤道直下の太陽と強い貿易風は3ヶ月ほどで海水を蒸発させて乾燥した塩の結晶を作り出す。人工的な熱を一切加えずに出来上がる結晶は透明で非常に堅く、内部には大海のミネラルが生きた状態で閉じこめられている。ペルー沖の赤道周辺で極地から沈み込んだ海洋深層水が沸き上がり、それが海流に乗って西に移動する。そこからクリスマス島の間には陸も島もないので海水は汚染されることなくクリスマス島まで運ばれてくる。世界でも一番綺麗だといわれるその海水をそのまま固まりにした塩はソーラーソルトと呼ばれている。日本ではレストランやホテルでの需要が高い、ユニークなところでは熱帯魚屋さんが好んで使っている。水に溶かすだけで最高の海水を作ることが出来るのでお客さんにも好評と言うことだ。

飛行機から見た塩田。

左側のグレーの四角い屋根が倉庫。その右側に海水が入った5つの区画が見える、倉庫から一番遠い区画が最初の海水、それぞれの区画で半分程度まで蒸発させて次の区画に移す。それを5回繰り返し、倉庫に一番近い区画で海水は塩の結晶となる。収穫までは3ヶ月以上かかるが、人口の熱を加えないので、世界一エコロジーな塩とも言える。


実際に作る過程では苦労が多い。海水を塩田に汲み上げるポンプのエンジンが壊れてしまって生産が開始できないことがあったり、エルニーニョの年には悪天候となり、収穫の前日に大雨に見舞われてしまい、せっかく結晶になった塩が流されてしまったり、運良く収穫の日を迎えても、カチカチに固まった結晶を砕いて集める一連の手作業は重労働で、それを炎天下の太陽の下で行うので作業環境は最悪だ。収穫した後も細かい海藻のかけらを丹念に取り除いてさらに日に干して乾燥させるという作業が残っている。しかし、これだけのことをしてまでも天然にこだわり続けて作る為、他の天然塩とは比較にならない滋味に富んだ旨味をもつ塩が出来上がる。

興味のある方は是非一度お試しいただきたい。日本へのバカ高い輸送代金のおかげで他の塩に比べるとお高い感じがするかもしれないが、世界で唯一天日だけで作られるソーラーソルト、きっと価値を分かっていただけると思う。

収穫後、さらに天日に干して乾燥させてから不純物を取り除く、全て手作業だ。

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