僕は涙が出た。数年前、はじめて会った彼女は、まだ20歳を少し過ぎたばかりのあどけなさも残る女の子だった。ある日、どうしてもガムラン(楽器)が欲しくなった僕は、ともだちのデザイナーにその旨を伝えてみた。
すると「新しくオフィスに入った女性スタッフが、ちょうどガムランを作る村の出身の子なんだ。連れて行ってもらうといいよ。」話はすぐにまとまった。そしてお互いの都合のいい日に待ち合わすことにした。
待ち合わせの朝、ホテルのロビーのソファーに、ちょこんと座っていたのが彼女だった。名前を聞くと、まだたどたどしい英語で、だけどきちんと答えてくれた。行きの車の中も帰りの車の中も、こちらから何か聞くと、きちんと答えてくれた。
そんな彼女が、いよいよ結婚することになったのだ。だけど、この結婚にいたるまでの道のりが、かなりたいへんなことだった。
好きな人が出来たことは聞いた。その好きな人と付き合うようになれたことも聞いていた。交際は順調だと聞いて、なんだかこっちもすごくハッピーだった。
だけどだけど、そこには大きな問題があった。それは何かと言うと、ふたりの家の宗教のちがいだった。相手のことを好きになればなるほど、その現実が大きくのしかかって、彼女はどんどん元気を無くしていった。宗教のちがいは決定的な問題なのであった。
だけど彼女はがんばった。そして遂に、結婚式を挙げることになったのだ。婚姻届を提出する前日、彼女に会った。その一週間後に行われる結婚式には、彼女のお父さんは出席してくれないのだということも教えてくれた。
でもさ、そのうちお父さんもわかってくれるよ。「Congratulations!」。僕はそれしか言えなかったけど、彼女は笑顔で答えてくれた。「Thank YOU!」。
はじめて会ってから数年経ち、いつの間にか友人のオフィスを切り盛りするようにまでなったきみのことだから、何も心配はしてないよ。幸せになれ!!