Round 111.「ちちんぷいぷい」

子供の頃、よく膝小僧を擦りむいた。ついでに肘も擦りむいた。外でばかり遊んでいると、どうしてもそんな「傷」が絶えなかった。

遊びはもっぱら“野球”で、上級生の人たちにはずいぶん世話になった。最初は“お豆”と呼ばれて、なんだかんだと融通を利かせてくれる。“お豆”には“アウト”にならないという特別なルールがあった。

ルールを覚えたり、それなりにゲームに参加出来るようになると、“お豆”の特権ははずれて、だんだん一丁前のプレイヤーとして認められるようになる。そうこうしていると、また新しく“お豆”が参加してくるようになる。

少々どんくさい奴は、いつまでたっても“お豆”のままだったけど、それはまたそれで、みんながみんな楽しくゲームをやることが出来てよかった。

楽しくて楽しくて仕方がなかったから、毎日毎日遊んだ。だから毎日毎日帰りが遅くなった。暗くなるのが遅くなる、特に夏の季節などは、ずいぶん帰りが遅くなって、怒られた。

汚れた服を玄関で脱がされて、良くそのまま風呂場へ直行させられた。お風呂場に入ると、怒られることから開放されるので、いつしかお風呂場は僕にとってそれなりに好ましい場所となっていった。

お湯に浸かる前に汚れた手や足を洗うんだけど、擦りむいた膝や肘は、痛くてちゃんと洗えなかった。ちゃんと洗えなくてもいいんだけれど、お湯に浸かる時に、まず足をお湯に入れてから、膝をお湯に浸けるのに少々の勇気が必要だった。お湯は傷口に、かなりシミた。

肩までお湯に浸かっても、肘は外に出してある。やっぱりシミるからだった。いよいよ覚悟を決めて、身体を全部、お湯の中に入れる。ヒリヒリと膝と肘が痛い。どこからともなく“ちちんぷいぷい”というオマジナイが聞こえる。

お風呂に入っていると、もっと子供の頃、僕に誰かが教えてくれたオマジナイが聞こえてくる。でもさぁ、この“ちちんぷいぷい”ってなんなんだ!?