その波打ち際の男性、ボブはハワイに10年住んでいるという陽気なニューヨーカーだった。現在は、アルコールや薬物中毒患者のトリートメント施設でカウンセラーをしているという彼は、自分がハワイに来た行きさつや、大好きだったお祖父さんに9歳の頃に死に別れて心がはり裂けそうになった話、それ以来続いたいろいろな障害や苦労などをぽつりぽつりと、おもしろおかしく語って聞かせてくれた。でも明るくふるまおうとすればするほど、彼の胸には孤独で哀しい過去がいっぱいつまっているように感じずにはいられなかった。
「ハワイの自然は大好き。でもハワイにいる間中、毎日が学びで毎日が試練で毎日が苦しみでもあったんだ」というボブ。それでも我慢して、頑張って、努力してきた甲斐があって、大きな会社に就職が決まり、そのトレーニングのためにあと数日でハワイを後にするという。
「あなたなら、きっと頑張れて、成功するわよ!世界を股にかけて走りまわる人になるわ!」というと、「そうなりたいと思う。でもきっとハワイのこの空気、自然がいつまでも心に焼き付いて消えることはないだろうなあ。去るとなるとやっぱり、寂しいんだよ。僕にとっては修行の場だったハワイだけど、やはり人生の転機を与えてくれたし、忘れられない思い出がいっぱいあるよ。だからきょうは、ハワイの海の音をたっぷり聞いて、一生この音や匂いを忘れないようにしようと思うんだ」とボブ。