 |
|
|

アロハ・シャツはノスタルジックな香り
|
|
|
|
|
ホノルルの中心部に程近い、カイムキ地区はワイキキからも車で5分程度の距離にある閑静な住宅街。このカイムキには昔から日系人が多く住みつき、週末になると日系人のおじいちゃん、おばあちゃん達が早朝から庭の手入れや掃除に精を出す。
|
|
|
|
|
|
私も以前この地区に住んでいたことがあり、その頃の大家さんだった日系人のオオハシさんのおばあちゃんを久しぶりに訪ねてみることにした。オオハシさんは、このカイムキの外れの敷地内に7軒もの家を持ち、そのうち6軒を借家として家族や、単身者に貸し出しているのだ。敷地内に足を踏み入れると、オオハシさんのおばあちゃんが、マンゴの木の世話をしていたが、私に気がついて「こっちへいらっしゃい!」と、庭にあるヤシの木の下のベンチに手招きしてくれた。「おばあちゃん元気?久しぶりね」と声をかけると「オフコース!やることあいっぱいあるけんね、アタシはいつもビージーよ!」と、広島弁と英語まじりの彼女独特の喋り方で、迎えてくれた。
|
|
|
|
|
|
ベンチに腰をおろして、おばあちゃんが用意してくれたグアバ・ジュースを飲みながら、隣の家をふと見ると、アロハシャツの絵の上に「ハワイ・パラダイス」という文字が書かれてある看板がぶら下がっているのが見えた。「ねえ、この家は確かケアニじいさんが住んでいたんだよね」と聞くと「今でも住んでるさ。週末になるとね、このごろはこの庭を利用して、自分が今までに集めたアロハシャツを売っとるんだよ」とオオハシさん。「なんでまたそんなことを始めたの?」と聞くと「ひとりで寂しいから、アロハシャツを売るっていうのは口実で、人と話がしたいだけさ」と肩をすくめた。ちょうどそのとき、ケアニじいさんが、家から手にいっぱいのアロハシャツを抱えてお出ましになった。「あ、おじいさん!元気?」と声をかけてみると、うれしそうに「おお!あんたか、庭で聞き覚えのある声がすると思っとったんじゃ」。
|
|
|
|
|
|
ケアニじいさんは、庭にゴザを敷き、そこにせっせとアロハシャツを並べ始めた。
日系人が好きそうな、鶴や竹など和風の柄もあれば、ハワイのトロピカルフラワーをデザインしたものなど、けっこうな種類をそろえている。じいさんは「ほら、このシャツはな、アロハシャツというものが出来た頃のものなんじゃ。だからボタンがココナッツの殻で出きておるんじゃぞ。それにこの縫い方を見てごらん。背中の布は必ず1枚布で縫製されておるんじゃ。それに袖つけはな、2重縫い(ダブルステッチ)になっておる。これは1930年代のものでな、値打ちものなんじゃ!」と自慢げに、シャツの説明をしてくれた。「うーん、じゃあ相当な値段するんじゃないの?」と聞くと、「売るとしたらそりゃ高いわさ!」と笑うケアニじいさん。「あれ、売ってるんじゃないの?」と聞くと「いや、こうやって人にシャツの説明をするのが楽しいんじゃ。昔の思い出や、もっと物事がゆっくりと進んで平和だった頃のハワイのことを今の若い人や、同年代の人と語り合うのが、何よりも楽しいんじゃよ」と彼は、ちょっぴり寂しそうに、そしてかつ昔を懐かしむように庭から見えるダイヤモンドヘッドの方向を見つめていた。
|
|
|
|
|
ふと気がつくと、彼もヤシの木やダイヤモンドヘッドの柄のノスタルジックなアロハシャツを着てる。そのアロハ柄の中のヤシの木の下に立って、ダイヤモンドヘッドを眺めているハワイアンの男性が、なぜかケアニじいさんに、そっくりであることに気がついた。もしかしたら、ハワイの伝統や文化を絶やすまいと、じいさんはこのアロハシャツの絵柄の、はるか遠い古代のハワイからメッセージを伝えるために、この世に戻って来たのかもしれない。そんなことを考えながら、じいさんのアロハシャツを見つめていると、シャツの絵柄のじいさんが、古代のノスタルジックな潮の香りと共に、にっこりと私に微笑んでいるように思えた。
|
|
|
|
|
|