「虹のむこうは、恋の香り」 |
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珍しくシャワー(通り雨)が降り注ぐホノルルの朝。草木のさわやかな香りと土の匂いが部屋の中に漂ってきて、太陽がなくともすがすがしいハワイの自然を感じることができる。思いっきり深呼吸をして、ほっとしたところに車が止まる音。いったい日曜の朝から誰が尋ねて来たのだろうと思っていると、サーフィンで真っ黒に日焼けをしたアレックスが登場した。 「やあ!」というそのアレックスの声は、いつものような元気がない。「どうしたの?急に電話もかけずにやってくるなんて、珍しいわね。」と問い掛けると、目を窓の外に移して「なんだか誰かと話しでもしたくなってさ」と妙な態度。「もしかして、リサと何かあったの?」という私の言葉に、頭をうなだれた彼は「昨日、仕事から帰ったら、彼女は家にはいなかったんだ。おばさんの家に移ったらしい。僕のことをずっと必要としてくれていると思っていたんだけど」と肩を落とす。アレックスもリサも日系4世で、高校時代からもう10年以上も恋人同士。だが、ここ数ヶ月リサが大学院に通いたいと言い出してから、2人の仲は微妙に変わり初めていた。 |
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甘ずっぱい香りがかすかに漂う広大なパイナップル畑を走りぬけ、ノースショアのハレイワまで一気に走り続けて街に着く少し手前で、私達の前に1つの虹が現れた。「ほら、虹だ!」と指をさして喜ぶ私に、アレックスは「今日いくつの虹に出会えるかなあ?」と言いながら車で虹を追いかけた。そして虹をくぐりぬけたその時、目の前にはコバルト・ブルーの太平洋が広がり、太陽の光を浴びてまるで青い布の上にダイヤモンドをちりばめたかのように、きらきらと輝いて、別世界にたどり着いたかのようだった。しばらく車を止めてその美しさに私達は見とれていた。 「冷たい!」とアレックス。彼がぼんやりと海を眺めている間に、近くの店でシェーブ・アイスを買ってきた私はそのアイスを彼の頬にくっつけた。「ほら、レインボー・シロップのやつを買ってきたから」と、鮮やかな虹色のシロップがかかった、1つのシェーブ・アイスを彼と2人で食べ始める。「空にかかる虹の味も、こんなに冷たいのかなあ?」とアレックス。「違うよ、甘いのよ。とってもやさしくて甘い味。天国(ヘブン)の香りつきよ!」と私。「ねえ、このシェーブ・アイスも今日出会った虹の1つに数えるのかい?」というアレックスに「こんなのは数えなくても、まだまだ今日は虹に出えるわよ!」と励ますように私は言い切った。 |
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ハレイワを後にして、サンセット・ビーチに向かうまでの間に、私達はダブル・レインボーに出会った。虹の上にまた虹!「いやあ、もしかしたらツキがまわってきたかも?」とちょっぴり元気になって来たアレックス。その勢いでオアフ島の東にむかってドライブを続け、最後は虹の名所であるマノアの谷にやってきた。あんのじょう、目の前の谷にはしっかりと虹の橋がかかっていた。ジープを止めてしばらくレインボーをじっと見つめるアレックス。「どうしたの?」と聞くと「あの虹を、心のフィルムに焼きつけているのさ。今まで虹がこんなにきれいだとはちっとも気がつかなかった」といいながら、やっとにっこりと微笑んだ。その彼のほほえみをたたえた顔は、虹の光に照らされて、美しく輝いて見えた。この後、ホノルルの街に戻るまでに東の空にもう1つの虹を見つけた。今日4つ目の虹。アレックスの赤いジープのラジオからは、おりしもカラパナのかつての名曲「For you, I'd chase a rainbow」のメローな歌が流れはじめていた。「リサと今夜もう一度話してみるよ。彼女のためなら、なんでもできそうな気がしてきたよ。この唄みたいに彼女のために、彼女と一緒に今度は虹を追いかけてみるよ」と決心したように虹を見つめる彼。その時うっすらと消え始めた虹のその端から、7人のカラフルな服を来た小さなメネフネ達がそっとアレックスに愛の虹を送っているのを、私は見たような気がした。 |
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