「夜明けのコーヒーは、モーニング・デューの香」

けたたましいベルの音で目を覚ます。時計を見れば、朝の4時。目覚まし時計をこんな時間にかけてもいないのにいったい何事かと思えば、電話のベル。
 ベットから手探りで電話を探りあてて受話器を取ると、「おはよう!」と元気なロバートの声。
 「何なのよ、こんなに朝早くから?」と不機嫌に答える私に「今から迎えにいくからさ、タンタラスの上からサンライズを一緒に見ようよ!」と、言うなり電話が切れた。まったく、なんだって日曜の早朝にこんな目に!と、私はブツブツ呟きながら、しぶしぶベットから出て、シャワーを浴びにバスルームに飛び込んだ。

 それから30分後、コンドミニアムの玄関には爽やかな顔でロバートがすでに愛車のブルーのフォルクスワーゲンを横付けにして待っていた。まだ半分寝ぼけ眼の私は「いったい何だってこんなに早く!」と文句を言い続けながら車に乗り込む。「まあ、そう言わずに。君にとっておきの日曜の朝をあげるからさ!」というと、まだ暗闇の朝にフォルクスワーゲンのエンジン音をうならせながら、タンタラスへと向う。

 ワイキキとダウンタウンのほぼ中間くらいの山手に位置するタンタラスの丘に着いた時、まだあたりは薄暗かった。ホノルルの街を見渡せるパーキング・スポットに車を止めて、外に出る。冷たい空気が体を包みこんで、ちょっぴりブルッと震えた私に、ロバートが家からポットに入れて持って来てくれた、私の大好きなマカデミアナッツ・コーヒーをマグカップに入れて手渡してくれた。白い湯気の立つコーヒーを一口のむと、その温かさが体全体にしみわたり、ほっとした気分になった。

 その時、「ほら、聞こえるかい?夜明けの音?」とロバート。
 「え?夜明けに音があるの?」とコーヒーをすすりながら聞く。
 「さっきまで、あたりは静まりかえっていたのに、小鳥が少しずつ目覚めて、さえずり始めているだろう?それに甘い花の香りとクリスピーな空気の香り。」と嬉しそうにあたりを眺め回わす彼。そんなふうに夜明けや自然を感じたことは今までに一度もなかった。夜明けに香りや音があったなんて。

 だんだんと太陽が昇り、あたりがずいぶんと明るくなると共に、海には白い波が立ち始め、そしてホノルルの街一面が白い霧で覆われて来た。その霧が徐々に下へ下へと降りてゆく光景が目の前に広がる。
 「きれいだね、モーニング・デュー(朝霧)!」と彼。
 間もなく始まる街の喧騒を前に、夜明けの香りを胸いっぱい吸い込みながら、こんなにステキな朝を迎えられて嬉しくなった。気がつくと、私達もモーニング・デューにしっとりと濡れていた。そういえば、今朝のコーヒーは、モーニング・デューの香りとブレンドされて、ロマンチックなハワイの夜明けの味がした。