Report-3
R・バックミンスター・フラーについて
 フラードーム、この名を聞いたことがある人は多いと思う。三角形の面で構成されたドームのことだ。富士山山頂にあるレーダードーム、巨大なものでは、1967年のモントリオール万国博覧会のアメリカのパビリオンとして建てられた直径76メートルのモントリオール・ドーム、最近は住宅の組み立てキットとして売られているものもある。フラードームとは、R・バックミンスター・フラーのフラーからとったもので、彼のジオデシック・ドーム理論によって造られたドームの呼び名となった。
モントリオール・ドーム
 R・バックミンスター・フラー(1895〜1983)の業績はドームだけではない。ドームは彼の思想をドームという形に表現したものの一つに過ぎず、フラーは、自分の思想をデザインという手法で現実化し表現し続けてきたと言える。詳しい業績などは、バックミンスター・フラー協会のサイトを見てもらうとして、ここでは彼の思想を中心に紹介したい。
 フラーが生まれた時代は工業化は進んでいたものの世界は貧しく、圧倒的多数の人が貧困状態で、良い暮らしをするためには他の誰かが苦しむことになるといった、奪い合いや戦争が絶えまない時代だった。そんな時代にフラーは、すべての生物が本能的に予めデザインされた役割を果たす限り、宇宙は生きるものすべての面倒を見ている(魚は海に遊泳料を支払う必要などない)ことに気付き、人間は他の動物と違い、思考しその思考に基づき行動することで種の進化をある程度コントロールできるようにデザインされていると考えた。
 人間の果たすべき役割は、奪い合うことではなく、地球上の資源を全ての人類が納得のいく生活ができるように使う方法を思考することだと考え、フラーは、確かな情報と効率の優れたデザインこそが、地球の資源の全体を明らかにし、それを公平に分配し、すべての人により良い暮らしをもたらすことができると判断し、基本になる情報の収集とそれを応用する実践活動を始めた。
 政治は社会の底辺にいる人たちを引き上げるのではなく、上にいるものを引き降ろすことばかりに汲々とし、最後は軍備に頼るのが常と、フラーは政治には全く関心がなかった。
 フラーは、原子から宇宙まで、自然は常にもっとも効率的かつ経済的なシステムで成り立っていると考え、自然がデザインを決定する方法、原理を学び、人間はそのデザイン原理、理論でデザインすべきだと考えた。では効率的、経済的デザインとは・・・?
 皆さんはマッチ棒6本で正三角形を4個つくるというクイズを知っているだろうか?テーブルの上で幾らマッチ棒を並べ変えても答えは見つからない。答えは、3本のマッチで正三角形をつくり、それを底面とした三角錐(正4面体)をつくるだ。
 フラーは、6本のマッチを平面に並べたのでは2個の三角形しか出来ないが、平面から離れれば、同じ6本のマッチで4個の三角形に囲まれた正4面体の空間をつくり出すことができるというシナジー(相乗効果)的デザイン効果に注目した。そしてフラーは「シナジェティック」というエネルギー幾何学を創り出す。
 「シナジェティック」について今回は詳しく触れないで、それらをふまえたフラーの居住空間、建物についての考え方を見て行こう。
次回はフラーの居住空間についてのレポート。